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 山梨県の西側、南アルプス山麓に位置する八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町の4町2村が、2003(平成15)年4月1日に合併して南アルプス市となりました。市の名前の由来となった南アルプスは、日本第2位の高峰である北岳をはじめ、間ノ岳、農鳥岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、甲斐駒ケ岳など3000メートル級の山々が連ります。そのふもとをながれる御勅使川、滝沢川、坪川の3つの水系沿いに市街地が広がっています。サクランボ、桃、スモモ、ぶどう、なし、柿、キウイフルーツ、リンゴといった果樹栽培など、これまでこの地に根づいてきた豊かな風土は、そのまま南アルプス市を印象づけるもうひとつの顔となっています。

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【連載 今、南アルプスが面白い】

新緑萌える~三恵(みつえ)の大ケヤキ~

 草もえる季節となりました。
 先日訪れたところ、新緑がとてもきれいに芽吹いていました。今回は季節感を取り入れて国指定(文化財/天然記念物)「三恵の大ケヤキ」を紹介したいと思います。

三恵の大ケヤキ1 三恵の大ケヤキ2
【写真】三恵の大ケヤキ

 樹木が文化財?・・・少し奇異に感じる方もいるかも知れませんが、人間の歴史には自然との密接な関わりがあります。人は、その時々の環境や自然の中で新たな英知を生み出し、これに助けられ、時にはそれに対抗するように、風土や景観を作り上げてきました。人間の歴史は自然との関わりを抜きには語れないのです。こうしたことから、樹木や動物、地質なども天然記念物として、文化財指定の対象となっています。

 そのなかで、南アルプス市の自然と人との関わりを象徴するものとして、この「三恵の大ケヤキ」があります。このケヤキは地域を代表する巨木として古くから知られ、昭和3年(1928)には、早くも当時の内務省によって、国の天然記念物に指定されています。

昭和3年の国指定時の文書
【写真】昭和3年の国指定時の文書(南アルプス市教育委員会蔵)

 平成元年(1989)の環境庁(当時)の調査では、ケヤキの中では、全国2位の大きさ(幹周り14.72m)をもつ木とされました。その後、行われた国のフォローアップ調査で、新たな木が発見されるなどして順位は下がりましたが、現在でも全国で五指に入る大きさを誇ります。なお、山梨県においては現在も、ケヤキだけではなく全ての木の種類を通じて最も大きな木とされています。
 もちろん、本当の樹齢は切り倒して年輪を数えてみないと分かりませんが、地域では樹齢千年とも二千年ともいわれています。その名称は、南アルプス市の前身である若草町が、三つの村の合併によって若草町になる前の「三恵村」に、この木があったことによります。なお、指定当初の名称は『三恵村の大欅(ケヤキ)』でしたが、三恵村が昭和29年(1954)合併して若草村となったことから、昭和31年(1956)『三恵の大ケヤキ』に改称されています。

 地理的には旧三恵村(寺部地区)に含まれますが、北に接する下今井地区との境で、そちらの集落に近いということもあって「今井(下を略した言い方)の大ケヤキ」とも呼ばれていました。また、別名「いめい(今井がなまった言い方)のおさごっさんの木」とも言われていました。これはこの大ケヤキの根元に通称「おさごっさん」と呼ばれる祠(ほこら)があり、ご神木として崇拝されていたことによると考えられます。ちなみに、この「おさごっさん」とは三宮社(さんぐうしゃ)がなまったものといわれています。

ケヤキの根元にあった祠
【写真】ケヤキの根元にあった祠。保護のため根の周辺の立ち入りを制限しているので、現在は傍らに集められ、参拝できるようになっています

 大木であるために、これまでに何度も落雷や台風などに遭ったといわれ、何百年か前の落雷によって幹が空洞になったとされるほか、大正15年(1926)には暴風雨のため、周囲7尺(約2.1m)、長さ3間(約5.4m)の幹が元から折れてしまったという記録が残されています。
 このような風雪に耐えてきたケヤキですが、老木であることには変わりなく、昭和四十年代には、いわばおじいさんにつえを手渡すように、支柱を立てて支えました。またその後も樹勢の衰えが目立つようになってきたため、平成8年度から9年度にかけて周辺の土壌改良などを実施し、樹勢の回復を図っています。その後も、平成17年度に支柱の架け替えを行ったほか、毎年のように枯れ枝の剪定(せんてい)などを行っています。
 地域を見守ってくれた大切な木。少しでも長く生きてもらえるよう、今度は私たちが見守っていく番なのだと思います。

樹勢回復事業の様子
【写真】樹勢回復事業の様子。アスファルトをはがし、雨水の浸透するブロックに直しました。(写真をクリックで施行の様子が分かります)

樹勢回復事業の様子
【写真】樹勢回復事業の様子。細い根を一本一本丁寧に掘り出し、周囲の土を入れ替えました。作業は、根が焼けないようにブルーシートの下で行われました。

 お年寄りの話によると、昔は子どもたちが幹の割れ目から空洞の部分に出入りして遊んだといいます。また、昭和34年(1959)の伊勢湾台風の際には、折れた枝を加工しようとした者に災いがあったとか、木を切り倒す計画をした責任者が病に侵されたなどという、神木らしい神秘性に満ちた逸話も残されています。
 このように、地域ではことあるごとに「三恵の大ケヤキのように」と語り伝えられ、人生の手本にも、励ましにもなってきた木です。現在も、地域の象徴として親しまれ、近接する「おおけやき児童館」にもその名を残しています。

大ケヤキ児童館 ケヤキの近景
【写真右】大ケヤキ児童館。奥に一際大きく見える木が三恵の大ケヤキです
【写真左】ケヤキの近景。うっそうと暗く、躍動感のある巨大な幹をみることができます

 今年も元気に葉を広げた大ケヤキ。遠くからの眺めや写真ではそれほど感じられないかもしれませんが、間近でみると誰もがその大きさに圧倒されるはず。みなさんもぜひ一度訪れ、悠久の時を生きてきた大ケヤキの生命力にふれてみてはいかがでしょうか。

三恵の大ケヤキの所在地:山梨県南アルプス市寺部字今井前1509

【南アルプス市教育委員会文化財課】

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