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南アルプス市は、山梨日日新聞社とタイアップして「南アルプス市ふるさとメール」を発信しています。ふるさとの最新情報や観光情報、山梨日日新聞に掲載された市に関係する記事などをサイトに掲載し、さらに会員登録者にはダイジェスト版メールもお届けします。お楽しみください!

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プロフィール

 山梨県の西側、南アルプス山麓に位置する八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町の4町2村が、2003(平成15)年4月1日に合併して南アルプス市となりました。市の名前の由来となった南アルプスは、日本第2位の高峰である北岳をはじめ、間ノ岳、農鳥岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、甲斐駒ケ岳など3000メートル級の山々が連ります。そのふもとをながれる御勅使川、滝沢川、坪川の3つの水系沿いに市街地が広がっています。サクランボ、桃、スモモ、ぶどう、なし、柿、キウイフルーツ、リンゴといった果樹栽培など、これまでこの地に根づいてきた豊かな風土は、そのまま南アルプス市を印象づけるもうひとつの顔となっています。

お知らせ

 南アルプス市ふるさとメールは、2023年3月末をもって配信を終了しました。今後は、南アルプス市ホームページやLINEなどで、最新情報や観光情報などを随時発信していきます。

【連載 今、南アルプスが面白い】

野呂川話
~長い長い水を求めた物語ー第二幕明治時代~

とらちゃん:芦安出身の女子高生。美人顔。歴女でもある。曽我物語のヒロイン虎御前とかかわりが・・・。だいちゃん:加賀美出身の女子高生。かわいいが天然とも言われる。甲斐源氏加賀美遠光の娘、大弐局とかかわりが・・・。

 

とら:まだまだ暑いね。よく日焼けしてるじゃん。
だい:みんなから「太陽の小町」って呼ばれてるわ。
とら:どうせ「エンジェル」とも呼ばれてるって言うんでしょ。さて、続き始めようか。
だい:なんの続きでしょうか。
とら:の・ろ・か・わ・ば・な・し。野呂川話。
だい:その手振りと合掌、なんだかどこかで見た感じよ。
とら:安心して。フランス語じゃないわ。
だい:目が星飛雄馬になってる。歴女の瞳だ。また長そうね。
とら:行くわよ!明治に入り、新政府ができたでしょう。するとさっそく明治4年(1871)7月に「早川開鑿(かいさく)嘆願書」が原方の名主さんたちの連名で甲府役所、昔の代官所ね、に提出されたの。それをまとめると「文政3年(1820)の計画は全長が長かったので、ルートを変更して願い出ます。洪水の時には上流で水を止めるので、御勅使川・釜無川沿いの人たちに迷惑はかかりませんよ」って内容よ。
だい:よし。がんばれ。何度でも何度でも何度でも立ち上がって叫ばなきゃ。声がかれるまで。力を尽して!
とら:でも時代が悪かったの。できたばかりの明治新政府はお金がなかった。そこで税のしくみを変えて、土地に一定の税率をかける仕組みに変えたのよ。「地租改正」ね。その時に「大小切り」っていう甲州だけにあった農民に有利な税制も廃止することになったの。だから県内は暴動が起きるほどの大騒動。とても「野呂川の水を引く」なんて県では考える余裕なかったのね。
だい:まただめなの。江戸時代と同じじゃない。時代はまわるのね、喜びと悲しみを繰り返しながら。
とら:その2年後に動きがあるわ。「大小切り騒動」が落ち着いた明治6年、若干28歳の藤村紫朗が県知事となって「殖産興業」政策を打ち出したのよ。
だい:「ショック サンコウギョ」って新しい漁法?
とら:・・・。産業を育てて国や県を豊かにしようってこと。その2年後の4月に、原方の豊村(上今井村と吉田村)、在家塚村、飯野村、明穂村(小笠原村・桃園村)の代表者4人が野呂川疎水を県へ陳情したのよ。
だい:村の名前が変わってる。合併したのね。
とら:10月には現地の測量が始まって工事の見積もり表ができたのよ。水路の全長約3.7キロメートル、その内トンネルの長さは3.47キロメートル、高さは約1.67メートル、底の幅約3メートル。
だい:それでまるごとハウマッチ?
とら:工事費はざっと見積もって2万1千7百円。
だい:なんか具体的ね。江戸時代と比べると全長が短くなってるわ。
とら:計画が見直されたのね。工費も思ったより安く済む計算なので、原七郷の人たちはとっても喜んだの。やっと200年の悲願が達成できるって。
だい:ツイてるね、ノッてるね!
とら:新しく田んぼにできる面積はなんと1061ヘクタールよ。東京ドームが4.7ヘクタールだから、ざっと226個分の広さね。
だい:でっけぇー。かっけぇー。
とら:その後きちんと計算したら工費は5万円必要になったわ。その資金を県と交渉するために嘆願書を出したの。内容はね、「何度も失望してきたけれど、「勧業」が今の国の政策でしょ。野呂川開削もその政策に合ってるじゃない。だから国や県が助けて下さいね。やるのはいつか、今でしょ」って感じ。
だい:そうだ、そうだ。ナウ・ゲット・ア・チャンス。
とら:だけど・・・。5万円は高額。各村では用意できないため借金しなきゃいけない。借りると言っても各村の負担。だから原方の内部でもめて、まとまらなかったの。
だい:そんな。みんな、ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワンよ。悔しくないの!
とら:さらに県は貸すか貸さないかはっきりしない。そして田方の人たちの根強い反対も続いていたのよ。
だい:もう、県もケジメなさい。
とら:結局だめだったんだ。
だい:関係者の人たち、きっと悲しくて、涙も枯れ果てて、笑顔にもなれなかったわね。もうだめかな。
とら:1000回目だめでも、1001回目は何か変わるかもしれないわよ。それから十数年後の明治24年、再び「野呂川疎水運動」が起こったの。
だい:今度こそ。ガッツだぜ!
とら:今度は綿密な調査が必要ってことで、内務省土木局長、つまりその道の日本のトップだった古市公威(ふるいちこうい)の力をかりて、現地測量を実施、精密な計画書を作ったのよ。その結果をもとにトンネルの距離を短くして工費もさらに少なくしたの。
だい:本格的!こんな計画が生まれてきてよかった。
とら:でもね、またもや資金に困ったの。今度は22万円なんだけど、在家塚出身で甲州財閥のトップ若尾逸平が保証人になってくれず、計画が終わってしまったの。さらにこの時期は煙草栽培が盛んになって、畑作中心の原七郷でもけっこう儲かっていたから昔ほどの情熱はなかったのね。後に52号線沿いに煙草の倉庫町ができて歓楽街もできたし。
だい:そこで油断しちゃだめじゃない。もうー勝手にしやがれ。
とら:それから時がたって明治33年、「野呂川話に金を出すな、先祖からの遺言だから」とまで言って資金提供を断っていた若尾逸平が方針をころっと変えて、この運動に乗り出してきたの。
だい:なぜ、なぜ、あなたは、心が変わったの。
とら:逸平さんは「野呂川疎水」の水を「水力発電」に利用しようと考えたのよ。甲州財閥の雄が重い腰をあげたことで、空気が一変したの。県知事も乗り気になって、逸平さんをはじめ56人で夜叉神峠を越えて現地を見に行ったそうよ。この時逸平さん86歳。
だい:完成したら、「野呂川から入ってトンネルの向こうは、芦安のまちでした」なんて素敵じゃない!
とら:ただこの動きに田方の人たちもだまっちゃいない。竹槍やムシロ旗を立てて県庁を囲んで抗議したの。
だい:原方と田方の争いを聞くと、ただ泣きたくなるの。でも力を尽して!
とら:これまでと違って県はその反対を押し切って原方の人たちが水利組合を作ることを内務省にお伺いをたてたの。そして、水利組合の許可がでたのよ。水利組合が許可されたってことは、野呂川疎水の準備ができたってこと。しかも、発電する権利をもらう代わりに工事費は逸平さんが出すって言ったの!
だい:バンザーイ。できてよかった。
とら:でもね、田方の人たちの反発もすごかったの。そうこうするうちに、明治が終わる45年、逸平さんも92歳。時が足りなかったわ。家族から資金提供の話も取り下げられ、計画はなくなってしまったのよ。
だい:あーあー、果てしない、夢を追い続けてるわよね。でも・・・この地で生きねば。
とら:そこは西郡の人たち。おちこんだりもしたけれど、みんな元気よ。土に根を下ろし、八ヶ岳の空っ風と共に生きてきた人たちだから。
だい:もうこうなったら、世界が終わるまではやめてほしくない。県も約束してくれたし、だからもう一度あきらめないで、まごころがつかめるその時まで!それにしても長いわね。
とら:明治時代はここまで。だいちゃん疲れた?
だい:お構いなぐ。しかし、この話熱いね。熱いよ。
とら:そうそう、来月10月5日、6日に南アルプス市で将棋頭と石積出の史跡10周年記念イベントがあるって知ってる?
だい:知ってるわよ。5日は現地で石積出の文化財調査にも参加できるっていうスペシャルな企画でしょ。将棋頭まで歩くのよね。フルーツのサービスあり、樹園の温泉あり、とってもナイスよね。先着70名。文化財課へ申し込みが必要よ。
とら:6日は午前中、あの竹蛇籠づくりが体験できるの。史跡の雑草を食べてくれるヤギさんにも会えるわ。将棋頭米おにぎりも食べられる!午後は最新の発掘情報が聞けたり、日本の中で石積出・将棋頭がどれだけすごいか、文化庁の調査官が話しをしてくれるの。
だい:お芝居などもあって笑いあり、感動ありのイベントらしいわ。みんなで高度農業情報センターに行かなくちゃ!
とら:なんだか私たちバンセンみたい。やばい、もうこんな時間。校門が閉まるわよ。40秒で支度して。
だい:ではまた来月。

 

 

【南アルプス市教育委員会文化財課】

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