南アルプス・鳳凰三山は、厳しい冬山シーズンが終わり、新緑の季節へゆっくりと装いを変えている。登山道入り口周辺には色とりどりの花が絶え間なく咲いているが、標高が上がると、山肌は多くの雪で覆われたままだ。季節移ろう鳳凰三山を訪ねた。
20、21の両日、夜叉神峠登山口から入り、薬師岳(標高2780メートル)、観音岳(同2840メートル)、地蔵ケ岳(同2764メートル)と続く稜線を歩いた。訪れた2日間は、雲に覆われる時間もあったが、おおむね晴天に恵まれた。登山道沿いではブナの葉が緑に色づき、タチツボスミレやヘビイチゴなどが紫、黄色の花を咲かせ、目を楽しませてくれた。
標高2400メートルより上方に登ると、残雪が目立つ。気温は高く、薄着になって歩みを進める。ダケカンバやコメツガなどの樹林に囲まれた登山道を抜けると、森林限界(2700メートル付近)を超えて稜線に出る。ハイマツ交じりの岩肌が見える。残雪も目につく。風が収まった瞬間、谷の方向から「グルグル」という独特な鳥の鳴き声が聞こえた。ライチョウが近くにいるようだ。
標高2800メートルの稜線に立つと、北岳や甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳など3千メートル級の山々を一望できた。南アルプスの大自然はこれから夏支度を進め、日々表情を変えていく。
(写真上)地蔵ケ岳(奥)から観音岳に向けて歩みを進める登山者
(写真下)薬師岳周辺から北岳に向けてカメラを構える登山者。北岳の荒々しい山肌を望むことができる
【山梨日日新聞社 5月24日掲載】