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南アルプス市は、山梨日日新聞社とタイアップして「南アルプス市ふるさとメール」を発信しています。ふるさとの最新情報や観光情報、山梨日日新聞に掲載された市に関係する記事などをサイトに掲載し、さらに会員登録者にはダイジェスト版メールもお届けします。お楽しみください!

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プロフィール

 山梨県の西側、南アルプス山麓に位置する八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町の4町2村が、2003(平成15)年4月1日に合併して南アルプス市となりました。市の名前の由来となった南アルプスは、日本第2位の高峰である北岳をはじめ、間ノ岳、農鳥岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、甲斐駒ケ岳など3000メートル級の山々が連ります。そのふもとをながれる御勅使川、滝沢川、坪川の3つの水系沿いに市街地が広がっています。サクランボ、桃、スモモ、ぶどう、なし、柿、キウイフルーツ、リンゴといった果樹栽培など、これまでこの地に根づいてきた豊かな風土は、そのまま南アルプス市を印象づけるもうひとつの顔となっています。

お知らせ

 南アルプス市ふるさとメールは、2023年3月末をもって配信を終了しました。今後は、南アルプス市ホームページやLINEなどで、最新情報や観光情報などを随時発信していきます。

【連載 今、南アルプスが面白い】

古市場若宮八幡神社と神楽 ~弥生時代から続く土地の力~

 南アルプス市古市場の若宮八幡神社参道。夕闇の中、石鳥居をくぐり、秋の実りを迎えた水田の道を歩くと、正面に電球の光や提灯の灯火が夕闇を暖かく照らしています。子ども達の笑い声や威勢のいい声がこだまし、鈴や太鼓の音、横笛の調べが重なりあって夜空に響いています。随神門をくぐり若宮八幡神社境内に入ると、やきそばやたこ焼き、クレープなどの露店が立ち並び、美味しそうな香りがただよってきました。小学生から中学生、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、いろいろな人がひしめき合っています。人混みに押されながら拝殿の前にたどり着くと、喧騒の中に一瞬の静寂が訪れます。さまざまな願いや決意を柏手に込めて、祈りが捧げられていました。

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【写真左:西の石鳥居、右:随身門】

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【写真】拝殿


 2017年の古市場若宮八幡神社の例祭は、かつて「八朔(はっさく)」と呼ばれ、旧暦の8月1日に行われていました。現在は10月最初の土日で行われています。西郡(にしごおり)きっての夜祭として有名で、古くから人々が集い賑わったそうです。氏子で神社のすぐ西側に住む深澤嘉徳さんは当時の様子をこう話してくれました。
 
「父から聞いた話だけど、国道52号線から神社へ続く参道には露店が両側にずらりと並んでね。参拝者も多くて身動きがとれない。そこで父に座敷の中を通らせてもらえないかと相談があってね、一人にいいよと言ったら、皆んなが続いてきた。あんときゃ困ったよと父が話してましたよ。」
 
 拝殿から音楽が響く東へ向くと、神楽殿では鯛釣りの舞が奉納されていました。鯛を釣りあげる恵比寿様に対抗して、鯛が釣れず蛸が釣れて悔しがる鬼役がコミカルに演じられ、参拝者の笑いを誘っています。その後いくつかの舞が続いて夜も深まる頃、「天の岩戸」が演じられました。アマテラス、スサノオ、アメノウズメノミコト、タヂカラオなど神話の神々がみな登場し、神楽のクライマックスを迎えます。
 

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【写真】鯛釣りの舞

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【写真】アマテラス

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【写真】天岩戸(※1)に隠れたアマテラス

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【写真】アメノウズメ

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【写真】天岩戸(※1)をとったタヂカラオ

【動画】「天の岩戸」 動画はこちらをクリックしてご覧ください。  


 若宮八幡神社の神楽は、文久2年(1862)に水害を治める願いから始められたと伝えられています。大正元年には西新居御崎神社から組み立て式の神楽殿を借用し、神楽は山寺の神官野中正内の門下生が舞ったのが始まりでした。大正9年には敬神会が発足し、会員の内十数名が野中宮司から神楽を学び、以後その舞を継承することとなりました。現在では約50名の会員が神楽の伝統を引き継がれています。
 
 神楽の舞台、若宮八幡神社は水が湧出する地域の中でやや土地が高い微高地に立地しています。南側は豊かな湧水を利用した水田が広がる一方、南から釜無川が逆流する水害に襲われることはほとんどない地点です。こうした立地環境から、神社周辺には住吉遺跡が広がっています。これまで行われてきた発掘調査の結果、弥生時代後期、古墳時代、奈良・平安時代、中世の遺構が発見されています。今年の8月に行った発掘調査でも古墳時代後期の住居跡から、須恵器の高坏が出土しました。静岡から愛知県で生産されたものと推測されます。この形の高坏は県内で出土しておらず、他地域との交流やこの地の独自性を考える上で貴重な発見となりました。また中世の溝跡からは喫茶文化を示す天目茶碗も発見されています。さらに神社にも平安時代の神像が4体安置され、創建の古さを伝えています。このように神社周辺は、弥生時代以降水稲作とともに暮らしてきた人々の歴史が重層的に積み重ねられた特別な空間とも言えるのです。
 

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【写真】若宮八幡神社 周辺には水田が広がっている

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【写真】若宮八幡神社拝殿

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【写真】住吉遺跡 古墳時代後期の住居跡から出土した須恵器の高坏や土師器の坏や甕

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【写真】平安時代の神像

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【写真】平安時代の神像

 
 その舞台の上で現在でも神楽が続けられている理由について、氏子総代の志村道之さんは微笑みながらこう話してくれました。
 
「この地域の敬神会では先輩と後輩が固い絆で結ばれているんです。そこが良いところなんです。神楽を続けていくには難しいこともあるでしょうが、祭りに来てくれた子どもたちがきっと受け継いでくれるでしょう。」
 

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【写真】氏子総代 志村道之さん
 
 天の岩戸が終わると露店も撤去され、人々の喧騒も遠のいていきました。静まった境内での神楽はよりいっそう神秘的な衣をまとい、夜更けまで祈りが捧げられました。
 
 
(※1)天岩戸
弟スサノオの乱暴に嫌気がさしたアマテラスは天岩戸に隠れてしまい、世界は暗闇に包まれます。困った八百万の神々は、さまざまな神さまが天岩戸を開けようと試みます。最後にアメノウズメノミコトが舞を披露し、隙間から覗いたアマテラスの隙をついて怪力のタヂカラオが岩戸を開け、世界は再び光に包まれます。

【南アルプス市教育委員会文化財課】

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