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 山梨県の西側、南アルプス山麓に位置する八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町の4町2村が、2003(平成15)年4月1日に合併して南アルプス市となりました。市の名前の由来となった南アルプスは、日本第2位の高峰である北岳をはじめ、間ノ岳、農鳥岳、仙丈ケ岳、鳳凰三山、甲斐駒ケ岳など3000メートル級の山々が連ります。そのふもとをながれる御勅使川、滝沢川、坪川の3つの水系沿いに市街地が広がっています。サクランボ、桃、スモモ、ぶどう、なし、柿、キウイフルーツ、リンゴといった果樹栽培など、これまでこの地に根づいてきた豊かな風土は、そのまま南アルプス市を印象づけるもうひとつの顔となっています。

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【連載 今、南アルプスが面白い】

「ふるさと〇〇(まるまる)博物館」スタートアップ連載
「〇博(まるはく)」への道(5) 正しい価値を掘り起こし、育むサイクル

 〇博のスタートアップシリーズも今回で5回目となりました。「掘り起こす」「育む」「伝える」ステップのうち「掘り起こす」ということについて、前回からより具体的な取り組みについてご紹介しております。まずは、地域に何があるのか、どんな価値が隠れているのか、身近なものの中からそのようなことを「気づき直す」ことからはじめることをご紹介しました。
 梅雨とは思えないほどカラッと晴れた日が続く今日この頃ですが、そのような目線でご近所を散策してみても良いかもしれませんね。
 
 いよいよ、具体的な話へと進んできましたので、はじめて読まれる方はぜひ以前の号も合わせてお読みください。

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【図1】ふるさと〇〇博物館の考え方
 

 

隠れている価値を「掘り起こす」

 前回、「掘り起こす」作業として、悉皆調査(しっかいちょうさ)と言って、先ず地域に何があるのかを洗い直す作業が必要であることを、主に建造物の観点からご紹介しました。フィールドワークやワークショップを開きながら歴史資源を掘り起こすとともに、文化財課では専門的な視点で年毎に地区を割り当て、集中的に調査をおこない、地区の皆さまと共有していきます。これらは、どちらが先にということではなく、卵が先か鶏が先かという話であって、お互いに、新たに判明したことを紹介し共有しながら進めていくものです。

 とは言え悉皆調査は5カ年の計画であり、分野を絞って実施し、そのデータをヒントに、住民のみなさまには引き続き掘り起こし→共有する活動を継続していただきたいのです。このような「掘り起こし」「育み」「伝える」活動を継続することで、その地域らしさがより浮き彫りされ、地域を誇りに思い、地域力が一層高まるものと考えているからです。つまり、このプロジェクトにゴールはないのです。
 

 

悉皆調査は地区ごとに

 悉皆調査を5カ年で行うため、1年目:八田地区・芦安地区、2年目:白根地区、3年目:若草地区、4年目:櫛形地区、5年目:甲西地区と年度毎に地区を割り当てます。さらに、昨今急激に失われている「建造物」・「古文書」・「民俗」・「口承」の4つの分野に絞り調査を実施します。建物の建替えなどに伴って、建物とともに古い道具類や書類、風習までも失われてしまいます。つまりこれらはリンクし合っている事柄なのです。

 「口承」はあまり耳にしない言葉かもしれませんが、「民俗」の一つとも言え、「伝承」や「記憶」と言い換えても良いかも知れません。風習や昔の様子、昔の道具の使い方、思い出話などもその地域ならではのことが沢山含まれており、記録し継承してゆきたいと考えるのです。年長者の記憶はまちの財産ですし、往時を思い浮かべながらみなさん必ず笑顔で語られるのです。その姿は記録したいですよね。
 

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【写真】ワークショップでの口承調査のひとコマ


 そして、これらは一つ意識すると、次から次へと繋がってよい循環が生まれてゆくのが面白いのです。
 

 

高尾地区天然氷作りを例に
 
 例えば、そのような良い一例として次のようなことが挙げられます。

 櫛形山の中腹にある高尾集落では、集落に関する歴史資源の調査やフィールドワークを5年前から継続して行っています。これも、最初は文化財課と2軒の住民の方とできっかけを作りましたが、その後は住民のほか、神社の団体、地域をサポートするボランティアグループによって発展して取り組まれているものです。

 調査の結果、集落内に石造物などの数々の歴史資源を確認できましたが、集落から離れた静かな森の中に、かつて天然氷を作られていた遺構が確認できました。

 氷作りは戦後しばらくして行われなくなったようですが、その家の方も詳細は把握されていませんでした。遺構の残り具合は良好で、氷室の存在と、氷池2面、そして池に水を取り入れるための水路や沈砂槽も確認できました。これらは明らかに地域の資源であると認識でき、すると次に、多くの方と共に清掃活動を実施してこの遺構を紹介し、より多くの方と共有をしたいと思うようになりました。
 

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【写真】突如森の中に現れる氷池の石垣

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【写真】氷池の現在の様子。氷の生産が終わり、植林がされている。

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【写真】倒木などを除去し、清掃した氷室跡の様子

 


 さらに、当時の姿を知りたいという思いが湧き、写真は残っていないのかという話題になり、そのような目線で家の中を探していただいたところ、大正時代とみられる氷作りの様子がわかる写真が発見されたのです。さらに、土蔵を直す際に、氷作りの出納関係や作業実態、取引先などを示す帳面が発見されました。所有者の方からは、「以前だったら何も考えずに廃棄してたと思うけど、こういうものにも意味があるのかと思って捨ててはいけないと思い、文化財課に連絡した」とおっしゃってました。
 

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【写真】大正時代の頃とみられる氷池や氷室を写した写真

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【写真】氷作りの作業内容や、日当、卸先などが記された帳簿。これにより、遅くとも明治34年には氷作りがおこなわれていたことや、高尾集落における当時の主要な産業であったことが判明した

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【写真】帳面には小笠原や倉庫町にあった氷店の名前も見え、当時の流通や店屋の様子などを伺うこともできる

 


 つまり、下記のような歴史資源を「掘り起こし」、「育む」活動のサイクルがおこなわれたのです。
 高尾の調査→氷室 氷池の現地把握(以上「掘り起こし」)→清掃活動、周囲の方と共有、人を連れて紹介→写真を見つけたいという意識→写真を発見→土蔵建替えの際に帳面を発見→「捨ててはいけない」と感じた(以上「育み」とさらなる「掘り起こし」)。

 実際にこの場所は「資源」としてガイドツアーでも案内され活用されていますので、「伝える」活動も行われているのです。
 

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【写真】綺麗にした氷室跡はガイドツアーの案内ポイントとなっており、活用されている


 このような流れが、それぞれの地域でそれぞれのテーマで活発に行われると、それまで知られていなかった地域の歴史資源がどんどん表舞台に現れ、市内は、各地域の魅力・誇りで溢れていくのではないでしょうか。

 さらに、高尾集落ではガイドツアーも実施していますが、そのように活用していただけるよう、掘り起こし正しい価値付けを行われた資源を使いやすいかたちで広く公開する必要があります。
 

 

ふるさと〇〇博物館のオープン
 
 多くの方に活用していただけるよう、なるべく多くの情報・データを公開する必要がありますので、そのシステム作りも順次取り掛かっているところですが、来年度の秋にはそれまでに調べたデータを新たなシステムに載せてネット上で公開し、また、散策マップなども提示する中で「ふるさと〇〇博物館」をオープンします。

 その時点では、当然全ての地域を調べられていませんので、「ふるさと〇〇博物館」とは完成したからオープンするという性格のものではありません。時間をかけながらどんどんと掘り起こし、蓄積するデータもどんどん充実してゆく、みなさんによって常に成長させる博物館なのです。
 
 それでは、次回、いよいよ「ふるさと〇〇博物館」のオープンについてご紹介し、このシリーズのまとめとしたいと思います。 

【南アルプス市教育委員会文化財課】

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