カーボン・マイレージ
米国ワインエデュケーター協会(SWE)日本支部長の児島速人さんによる「地球温暖化とワイン」をテーマにしたセミナーがこのほど、都内で開かれました。
今年2月にスペイン・バルセロナで開かれた第2回「地球温暖化とワイン」カンファレンスの内容紹介がメーン。セミナーの中で提唱していました「カーボン・マイレージ」という考え方に興味を持ちました。
ワインはその醸造メカニズムを見ても明らかなように、アルコール発酵は、糖分が酵母の働きでエチルアルコールと炭酸ガス(CO2)に変化する仕組みです。1%のアルコールを醸造するには約1.8%の糖分が必要。ブリックス(糖度)22度(潜在アルコール度数12.2%)の果汁1リットルを発酵させると、107グラムのCO2が発生する計算になるそうです。
さらにワイン輸送時におけるCO2の排出量をみると、船便、船便リーファー(保冷)使用、鉄道輸送(ディーゼル)、トラック輸送、航空便輸送の順に大きくなっていきます。そのほか、樽(たる)製造時のCO2排出を考えると樽不使用、高アルコールよりも低アルコール、コルクも石油化学製品を使わない天然素材など、CO2を中心に考えると飲むべきワインが限られていきます。
面白いのは、これらを踏まえた児島さんによるワイン消費者(東京在住者)への提言。
- フランスのヌーボー(新酒)=特に空輸もの=ではなく、国産品を飲もう!
- 国産ワインもカーボン・マイレージでみると、東京に近いのは山梨、長野、山形、北海道の順。東京で飲むには山梨県産ワインがもっともいい!
さらにワイナリーへの提言として、ソーラーシステムの完備や温暖化対策のブランド化などをラベル表示でアピールする仕組みづくりの必要性も指摘していました。
ただ、ワインはあくまで嗜好品。最後は「温暖化対策を意識しつつも、おいしいワインを楽しんでください」とまとめていました。なるほど!!
温暖化問題を考えるスパークリングワインの試飲もありました。
このうちの1つは、英国産。温暖化の影響で、発泡ワインで知られるフランス・シャンパーニュ地方は最適地が英国南部に移動するとも言われています。英国産の銘柄は「リッジビュー メレ キャヴェンディッシュ 2003」(ピノ・ノワール35%、ピノムニエ27%、シャルドネ38%。瓶内2次発酵)。ワイナリーはサセックス州南部。1994年に創立し、99年産(ヴィンテージ)から生産。ちなみにテイスティングの結果は、4種類のうちシャンパン(モエ)を当てた以外は全滅でした(苦笑)。
(2008年07月24日更新)