甲斐犬は南アルプス連峰を中心に芦安、西山などを源流として繁殖した犬で、国内でも珍しい原種犬として特別天然記念物に指定されており、その優秀性は高く評価されています。
甲斐犬の特徴は、青竹をスパッと斜めに切ったように立った耳と、何ものをも恐れない目、顔はごく小さく、行動は極めて機敏です。その強靱(きょうじん)な脚力で険しい岩場でも自由に駆け回り、南アルプスの厳しい自然の中で育まれた耳や鼻などの鋭い感覚でカモシカなどのすみかをすぐに探しあて、たちまち追いつめてしまいます。
甲斐犬の歴史は古く、江戸時代には鷹匠という職人によって買いとられて、将軍や領主の鷹狩りや巻き狩りで活躍するなど、古くからその能力が認められています。かつての芦安や西山などの猟師にとって、甲斐犬は銃よりも大切な武器であり、猟に出かける時は必ず三匹ほどを連れて行ったそうです。その昔、名取将監という火縄銃をとったら日本一といわれるほどのカモシカ狩りの名人がいたといいますから、芦安とカモシカ、甲斐犬との縁がうかがえます。
カモシカが昭和9年に国指定の特別天然記念物に指定され捕獲が厳重に禁止されるのと時を同じくして、その頃から数がめっきり減っていた甲斐犬も天然記念物に指定されました。芦安では現在も甲斐犬発祥の地として、愛犬家たちによって繁殖と保護のための保存活動が行われています。
そんななか、12月の末に南アルプス芦安犬舎に6匹の赤ちゃんが生まれました。生後2か月ほどになりますが、やんちゃに駆け回る姿に「えん丸は、かわいげだなぁ~」と地元住民は心癒されています。
*芦安の方言で子犬のことを「えん丸と」呼んでいます。