芦安山岳館は、山梨日日新聞社とタイアップして「芦安山岳館メール」を発信しています。南アルプスの最新情報や観光情報、山梨日日新聞に掲載された山岳に関係する記事などをサイトに掲載し、さらに会員登録者にはダイジェスト版メールもお届けします。お楽しみください!

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 南アルプス芦安山岳館は、2003年3月21日に開館しました。山岳文化の発掘と研究・継承、自然保護や安全登山の普及、山を仲立ちとしたさまざまな交流の実現を目的としています。氷河時代から数万年を生き続けるキタダケソウやライチョウが住む3000メートルの高山、生活と結びついて文化や産業、技術を育ててきた里山。芦安地域は自然、文化ともに魅力に満ちた地域です。山岳館はその一端を知っていただく施設です。また、この施設は、県産材の利用促進を図ることを目的としたモデル的施設でもあります。多くの方に見学していただき、県産材の良さを知っていただきたいと思います。

お知らせ

 南アルプス市芦安山岳館メールは、2023年3月末をもって配信を終了しました。今後は、南アルプスNetやFacebookなどで、山岳情報や観光情報などを随時発信していきます。

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【山岳館便り】

高山植物の踏み荒らしが多発

 南アルプス・北岳周辺の高山植物の群生地で、登山者が希少種のキタダケソウなどを踏み荒らすケースが増加している。山岳関係者によると、登山ブームで登山者が増える中、高山植物の価値が広く知られ、近くで写真を撮ろうと群生地に入り込んでいるとみられる。北岳では以前、高山植物の盗掘やニホンジカによる食害が深刻化し、山梨県が罰則規定を盛り込んだ条例を制定したり、環境省が防護柵を設置したりして対応を進めてきたが、踏み荒らしには現在、有効な手だてがない状況。関係者の間では、防護ネットの設置などを含めた被害防止に向けた対応を取るべきだとの声が上がっている。

20110825_027  地元山岳関係者によると、北岳有数の高山植物の群生地である池山吊尾根から北岳山荘に向かうルート(標高2950メートル付近)では、約5年前から、高山植物の群生地に踏み込んだ靴の跡が複数確認されている。花が咲く箇所に一歩一歩進むような靴の跡などから、荒らす目的ではなく、写真を撮影するために入り込んでいるとみられるという。
 北岳では毎年6月下旬~11月上旬に、環境省職員や地元の山岳関係者が盗掘の防止や高山植物の生育状況調査を目的に、広さ約38・5ヘクタールのキタダケソウの生育保護区をパトロールしている。範囲が広く、踏み荒らす現場に遭遇することはほとんどなく、被害を防ぐのは難しいという。注意を喚起する看板を設置しているが、被害は後を絶たない。一度踏み荒らされると、植物が育たないケースもある。
 北岳周辺の環境保護活動などに取り組む地元山岳関係者らでつくるNPO法人芦安ファンクラブによると、1960年代後半~70年代に登山者や販売業者による盗掘が目立った。しかし、県が制定した「県高山植物の保護に関する条例」(85年)、「県希少野生動植物種の保護に関する条例」(2007年改正)で罰則規定を盛り込み、高山植物の希少価値を周知したことなどで盗掘は次第に減少。一方で、群生地に踏み込んだ跡が次第に目立つようになった。
 被害が増える背景について、地元山岳関係者は「近年の登山ブームで北岳にも登山のベテランだけでなく初心者が増え、希少な高山植物を守る意識が一部で低くなっている」と指摘。「盗掘の場合、(高山植物の価値が下がる)踏み込むようなことはしない」ため、以前は踏み荒らすケースは現在ほど見られなかったという。山岳関係者は「呼び掛けても改善せず、今後も続くようであれば、ロープやネットの設置も検討していかなければならない」としている。
 県が制定した条例では、キタダケソウやタカネマンテマ、キバナノアツモリソウなど22種類を指定希少野生動植物種として定めていて、罰則規定は盗掘などの採取だけでなく、損傷行為も対象となる。しかし、県みどり自然課によると「踏み荒らしが損傷行為に当たる可能性もあるが、行為を発見し、処罰対象となる行為の立証は難しい」という。
 南アルプス芦安山岳館の塩沢久仙館長は「民間と行政が協力し、高山植物保護につなげていきたい」と話している。

(写真)高山植物の群生地に残っている踏み跡=南アルプス・北岳

【山梨日日新聞社 8月25日掲載】

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