環境省は三、四の両日、南アルプス・仙丈ケ岳(三、○三三メートル)の長野県側でニホンジカによる高山植物の食害を防ぐための防護柵を設置した。同省が南アルプス国立公園内にシカの防護柵を設置したのは初めてで、南アルプス市からもNPO芦安ファンクラブが参加。シカの食害は北岳でも深刻化し、七月からは山梨県が本格調査に乗り出していて、県境を越えた対策が必要となりそうだ。
同省南アルプス自然保護官事務所によると、昨年度から行った調査の結果、シナノキンバイなどの高山植物がシカの食害や踏み荒らし被害を受けていることが分かり、仙丈ケ岳の標高約二千七百メートルの「馬の背」付近で対策に乗り出すこととなった。
防護柵は高さ約二メートルで、「馬の背」や登山道分岐周辺の五カ所に設置し、防護エリアは計千平方メートルほど。定期的に効果を確認し、被害の拡大防止と植生の回復を目指す。
設置作業には長野県、伊那市、信州大などでつくる南アルプス食害対策協議会や同高山植物保護ボランティアネットワークのほか、南アルプス市からも防護柵の設置経験のある同クラブから約十人が参加した。メンバーの清水准一さん(58)は「南アルプスの世界自然遺産登録に向け、県境を越えて互いに連携を強めていきたい」と話す。
一方、山梨県が七月中旬に北岳で高山植物の食害状況を調べたところ、標高二千四百五十-二千七百五十メートルでミヤマハナシノブやサンカヨウなどの被害を確認。県は定点調査を続ける一方、今月中旬以降シカに衛星利用測位システム(GPS)を取り付けて行動範囲を把握する調査も行う。
南アルプス国立公園内では、同協議会が八月上旬に仙丈ケ岳に防護柵を設置したほか、静岡県の三伏峠のお花畑で同県などが柵を設置予定。自然保護官事務所は「シカに県境は関係ない。山梨、長野、静岡県で調査を行いながら、必要性があれば柵の設置などの対策を検討していきたい」としている。
【山梨日日新聞社 9月5日掲載】
