春の叙勲が29日付で発表された。県在住の受章者のうち、長年にわたって山岳遭難の救助活動に取り組んできた清水准一さん(70)=瑞宝単光章、南アルプス市=の歩みをたどった。
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北岳など南アルプス山系で40年以上にわたり、山岳遭難の救助活動に貢献してきた。受章について「一緒に活動してきた仲間、指導していただいた先輩方がいたからこそ。みんなのおかげ」と感謝を口にする。
29歳の時、北岳山荘の職員として働いたことが救助活動を始めたきっかけ。「遭難者が多い年で、対応に追われた。誰かが助けなければいけないと、地元の宿命を感じた」と振り返る。
2000年には北岳で遭難死した男性の家族から多額の寄付を受け、「悲惨な事故を減らしたい」と民間組織「大久保基金の会」を設立し、現在も会長を務めている。約20人が所属し、山岳遭難防止や安全登山の啓発活動に取り組んでいる。
数々の救助に携わったが、「思い出したくない事案ばかり」。滑落した男性を仲間と交代で背負って3日がかりで下山したことや、胸の高さまである雪で覆われた北岳でわずかな情報を頼りに遭難者を捜し回ったことが印象に残っているという。「山は思っているよりも大きい。人間も1本の木よりもはるかに小さい。迷ってしまうと捜すのは大変」と話す。
近年の登山ブームもあり、山の楽しみ方が多様化していると感じている。「どんな人でも安全に帰ってきてほしい。また来ればいいとゆとりの気持ちを持って山に登ってほしい」と安全登山を呼び掛ける。
NPO法人芦安ファンクラブの会長も務め、自然環境の保護や地域の活性化にも取り組む。「芦安の文化や南アルプスの自然など、地域の宝を次の世代にも伝えていきたい」と笑顔を見せた。
(写真)「後継者の育成が残された使命」と話す清水准一さん=南アルプス市芦安芦倉
【山梨日日新聞 4月29日掲載】
[南アルプス市芦安山岳館]
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