甲州種ブドウのルーツを解明
甲州種ブドウは、ヨーロッパ・中東原産のヴィティス・ヴィニフェラ種と東アジア系の野生種が交雑したブドウであることを、酒類総合研究所(広島)が突き止めました。甲州種の分類や由来には諸説あり、これまではっきりしていませんでしたが、甲州種ブドウのルーツが解明されました。研究を担当した同研究所研究企画知財部門長の後藤奈美さんが11月9日、山梨大で開かれた日本ブドウ・ワイン学会で研究成果を発表しました。
同研究所によると、甲州種ブドウのDNAを詳細に解析したところ、大部分はヴィニフェラだが、一部に中国の野生ブドウのDNAが含まれているハイブリッドであることが明らかになりました。甲州種の祖先に当たるヴィニフェラが中国の野生種「ダヴィディ」と交雑し、さらにヴィニフェラと交配して日本に伝わったと考えられるといいます。同研究所は、甲州種がシルクロードを伝わって日本にたどり着いたことがDNAの中に刻み込まれていたとみています。
米国の研究チームとの共同研究で核DNAのSNPs解析を行ったところ、甲州種はヴィニフェラの近くだが、やや野生種寄りの位置にあることが分かったといいます。計算上、71.5%がヴィニフェラ、残りが野生種とのこと。その他の品種でヴィニフェラの割合をみると、甲州三尺81.8%、竜眼91.7%、和田紅90.4%、白鶏心100%と推定されるそうです。
さらに、母親(胚珠親)から遺伝する葉緑体DNAの部分配列を調べたところ、甲州種は中国の野生種、ダヴィディの1系統と一致することが分かりました。甲州種の4分の1が野生種という計算が正しければ、ダヴィディが「母方の祖母」に当たるそうです。甲州の枝の付け根にある小さなとげは、ダヴィディから引き継いだとみられるといいます。
発表後、後藤さんは「ブドウの由来を説明できるようになり、海外の人に、より興味を持ってもらえると思います」と説明。野生種のDNAが含まれていることについては「栽培の専門家からは『やっぱり』という感想をいただきました。甲州種ブドウから品質の高いワインができていることを考えると、野生種はマイナスに作用していないと考えます」と話しました。また、「甲州のワインを飲む時、このブドウははるばるシルクロードをたどって来たのだ、と感じていただけるとうれしいです」ともコメントしています。
(2013年11月15日更新)