芦安地区のもっとも奥にある集落「沓沢(くつさわ)」にある山の神。ここのご神木は、かつては千年栂とも呼ばれた栂の大木=写真=です。高さ約28メートル、幹回り約5メートル、樹齢は500年以上と言われています。古くは、武田信虎の家臣だった名取将監(しょうげん)が、狩りに出るときに豊猟と安全を祈願したと伝えられています。
大栂の下には大山祀命(おおやまづみのみこと)[山の神]を祀る4基の石祠が置かれています。正月の17日は山の神の初山開きの日で、昭和の初期頃までは、大曽利や沓沢の若い衆が夜中の0時を過ぎると先を争って山の神にお参りしたそうです。また沓沢では3月4日にも祭礼がおこなわれ、多くの人でにぎわっていたそうです。
今では、芦安では山で仕事をする人もなくなりましたが、岩盤の上に根を張り、これだけ美しく成長したこの巨木は、まさにご神木というにふさわしい風格を漂わせています。芦安へお越しの際は、山と共に生きた芦安の人々の思いに触れながら、この山里を歩いてみてはいかがでしょうか。