国の文化審議会は17日、韮崎、南アルプス両市を通る農業用水路「徳島堰」を登録記念物(遺跡関係)に選定するよう末松信介文部科学相に答申した。告示を経て登録される見通しで、七里岩(韮崎市)に次いで県内2例目の登録記念物となる。
両市によると、徳島堰は釜無川右岸地域に農業用水を供給するために造られたかんがい用水路。江戸前期の1665(寛文5)年、江戸の商人徳島兵左衛門俊正が着工した。水害で工事を断念したが、甲府藩が事業を引き継ぎ5年後に完成。御勅使川などの川や沢の下に樋を埋めるなどの工法を駆使して、韮崎市円野町上円井から南アルプス市飯野新田まで全長約17キロに、釜無川から取水した水を行き渡らせた。
昭和40年代に全線コンクリート化。スプリンクラー網を敷設するなどし、開削から350年以上たった今も、サクランボやスモモなどの果樹農地1178ヘクタール、水田750ヘクタールを潤している。水力発電にも利用。用水路の登録記念物は全国で3例目になる。
登録に向けては、徳島堰土地改良区と釜無川右岸土地改良区連合、韮崎市、南アルプス市が連携し、5年ほど前から準備を進めてきた。徳島堰土地改良区の藤原理事長は「先人たちが苦労して開削し、地域を潤してきた用水路。後世に残す価値ある財産として認められ、これからも大事に維持管理して伝えていきたい」と話し、看板設置などを計画している。
【山梨日日新聞 6月18日掲載】