「美しい農村風景を取り戻そう」

20101114_001  日が落ち、辺りが暗闇に包まれたころ、人家もまばらな南アルプス市上宮地の高台に明かりがともった。農業を核にした地域活性化に取り組んでいるNPO法人「南アルプス山麓いやしの里づくりの会」が活動拠点として構えるプレハブ小屋。室内では、どうやって地域を盛り上げていくか、熱のこもった意見が飛び交っていた。
 「遊休農地が増え、美しい農村風景が失われつつある中で、どう人を呼び込む場にしていけるか」。のちに理事長となる三枝正揮さん(69)=同市野牛島=ら住民有志が抱いていた危機感が会の出発点だ。2年前から、仲間同士が民家に集まり、どうすれば地域が元気になるのか語り合い始めた。
 集まったメンバーは、年齢20~70代。職業も果樹農家や野菜農家、山岳関係者、家具職人、主婦と幅広い。共通しているのは、この地域を活気づけたい、との思いだった。
 三枝さんたちが活動を展開する上宮地地区は南アルプス市内でも山のふもとに近い。傾斜地が多く、農業を営むには条件があまり良くない場所もある。農家の高齢化が進むにつれ、耕作されず、荒れ果てた農地が広がるようになった。
 三枝さんたちはまず、こうした遊休農地を借り、農業を始めることにした。これまで農具を握ったことがない人もいたが、4区画1500平方メートルから始めた栽培面積は、今年、15区画7千平方メートルまで広がった。昨年夏には活動拠点「天空舎さかき」も甲府盆地を見渡せる高台に完成した。
 三枝さんたちが目指すのは農業を中心にした「いやしの里」づくりだ。採れたての野菜を販売する市場を開いたり、農業体験を行うほか、子どもを対象にした自然体験企画、旧跡巡りツアーなど多彩なイベントを企画。「人を呼び込み、地域の魅力を知ってもらう」のが狙いだ。
 分担して行う農作業とともに、毎月2回、活動拠点の小屋に集まり、意見を交わす。議論が夜遅くまで続くことも少なくない。
 「お金をかけなくても人が動けば地域は活気づく。この場所に人がいる限り、きっと盛り上がる」と熱っぽく語る三枝さん。眼下に広がる甲府盆地の夜景が目に映った。
 〈文=青柳 秀弥、写真=広瀬 徹〉

(写真)甲府盆地の夜景を望むロケーションにある天空舎さかき。机を囲みメンバーたちの活発な意見が飛び交う=南アルプス市上宮地

【山梨日日新聞社 11月14日掲載】